『チョコレート・ドーナッツ』
『チョコレート・ドーナッツ』DVDを見て
「もし、山を動かすほどの強い信仰を持っていても、愛がないのなら、私には何の値打ちもないのです。
そして、自分の財産を全部、貧しい人たちに分け与えても、また、よい知らせをのべ伝えるために火あぶりの刑に甘んじても、愛がなければ、何の値打ちもありません。」
コリント人への手紙13の2~3
というパウロの言葉が思い起こされた。
口パクで歌いオカマショーで日銭を稼ぐルディ。
同性愛を隠して暮らす弁護士のポール。
ルディの隣の部屋の麻薬中毒の母親に愛されていない、ダウン症の少年マルコ。
この三人の愛情あふれるヒューマンなドラマで、社会のマイノリティに属する人の愛と哀しさと素敵さが胸を打つ。
建前の法律を振りかざす判事や裁判官が、パリサイ的で白く塗られた墓のような偽善者として写る。
ポールの最後の手紙は淡々として、悲しくて切ない。
ルディは最初の方は只のオカマだったのに、マルコを我が子のように愛して、
戦い破れた悲しい体験をした後、エンディングの歌うシーンでは、
風格のあるシンガーとして人の心を揺さぶるような愛の歌を歌う。
たった一年という短い期間だけれど、三人の愛情と絆を感じると、
何々だからいい…とか、何々だからダメで生きる意味がないとか、
そういうんじゃないと実感する。そして、冒頭の愛
この愛と喪失によって、ルディもポールも、人として大きく深い生き方をするようになっていくのだと思った。マルコは、ダウン症で知的障害があっても、二人に大きなものを与えた生だったのだと思う。